「給与計算は絶対間違ってはいけない!」と言われても
人間ですから、当然間違えはあります。
でも、給与を間違えると社内では大変な騒ぎになりますよね。
よくわかります。
ぼくは会社は違えど給与計算を8年担当しています。
そんなぼくが今までどんなミスを行い、どんなリカバリーをしてきたか体験を元に事例を5つご紹介します。
この記事では、
- 現在、給与担当者の方
- これから給与計算業務に携わる方
- 人事未経験で異動になった管理職の方
こういった方々にお役に立つ記事となっております。
給与計算のミスを防ぎたいと思う方はぜひご覧ください。
給与計算ミスの事例(原因と対策)
給与計算業務はITが発展した現代でも人力で行うの作業がほとんどです。
- 住所が変わった
- 昇格した
- 家族が増えた
などなど、何か社員に変化が起こると給与に影響します。
現在は社員自身に住所など入力させるシステムもあると思いますが、基本給の変更や通勤費の入力などは手入力またはエクセル取り込みという会社がほとんどだと思います。
なのでミスは簡単に起きますし、チェックも時間をかけて行う必要があるのです。
ぼくは今まで数多くの給与計算ミスをしてきました(あまりよろしくないですが)
ここからは、ぼくが実際やってしまったミスと原因、実際に行った対策をご紹介します。
事例1.単身赴任手当の過払い
ぼくの勤めていた会社では家族を扶養に入れており、かつ異動で単身赴任になっている方に単身赴任手当27,000円を支給していました。
ある社員が、単身赴任中にのお子さんが就職されて扶養者がいなくなるということがありました。
扶養をはずす手続きを行い、家族手当(扶養手当)を不支給にする処理は行っていました。
しかし、「単身赴任手当を不支給にする」処理については頭からスッポリ抜けていたのです。
結果的に年末調整の時に扶養控除申告書をもらって
「あれ、扶養者いない・・・。」
となり27,000円×8ヵ月の216,000円の過払いが発生してしまいました。
気づいたのは11月末だったので、本人に事情を説明して、12月賞与から過払い分を徴収することになりました。
(ちなみに本人は間違って支給されていることを気づいていました)
原因としては、
- 当時給与計算を担当して間もないために、「単身赴任手当=単身赴任している人」勘違いしていた
- 就業規則を読み込んでいなかった
- チェックしてくれてた先輩や上司も単身赴任手当まで気が回っていなかった
この3点だと思います。
対策としては下記のとおりです。
- 単身赴任手当を管理する表を作成し、毎月回覧する
- 社内の家族異動届に単身赴任の変更”ある”か”ない”かを判定する項目を設け給与処理のエビデンスとする
以上2点です。
それ以来、単身赴任手当のミスはなくなりました。
事例2.基本給の過払い
ぼくの勤めていた会社では海外転勤もありました。
当時担当していた時は会社で初めて海外在中者の対応で、新しく海外赴任者用の給与項目を新たに作り、その項目で給与を支給していました。
ある時、海外からその社員が帰ってきて、通常の給与に戻すというタイミングがありました。
上司からは海外給与はしばらくないので給与項目の一覧からはずすよう指示があり、ぼくは給与項目を「使用をしない」という設定に変更したのです。
そしてぼくは給与システムで「使用しない=支給されない」と思い込んでいました。
しかし、使ってた給与システムは「使用しない=帳票に表示されない」だけでマスタに金額が入っていれば支給される仕組みになっていたのです。
なので出力した帳票には海外給与の項目は表示されてませんが、裏では支給されていました。
そのことに気づいたのは給料日が終わり、人件費の集計をしていた時です。
「あれ、この部の基本給、急に高くなったな・・・。」
でした。
結果的に300,000円の過払いで本人から現金でもらいました(振込だと手数料がかかるため)
原因としては、
- 給与システムの「使用しない」が「支給されない」だと勘違いしていた
- 支給項目と、総支給額の合計が一致するか確認をしていないかった
対策は下記のとおりです。
- 全項目を帳票出力する
- 支給項目、控除項目をエクセル抽出し、総合計があっているか計算式に当てはめチェックする
このミスをした時はかなり怒られましたし、へこみました。
給与計算ソフトの仕様は確認しておきましょう。
事例3.残業時間の入力ミス
転職したばかりの時です。
勤怠が閉まった後に
「残業時間を15時間から15時間30分に変更になったから給与システムの方も変更しといて」
と連絡がありました。
ぼくはその社員の勤怠を残業時間が「15」となっているところを「15.5」と手入力して処理しました。
これが間違えだったのです。
試用していた給与計算ソフトは10進数ではなく60進数だったのです。
つまり「15.5」ではなく「15.3」が正解でした。
それに気づかず給料日を迎え、給与明細を見た本人から連絡がありました。
「これ15時間30分でなく15時間50分で計算されてますよ」
結果的に数百円の過払いで翌月に給与訂正として間違った分を控除しました。
原因としては
- 使用している給与計算システムが60進数だと思わなかった
- チェックしている人も気にも留めていなかった
対策としては下記のとおりです。
- 残業時間を手入力した場合、手計算で残業代があっているかチェックする
- 給与システムの仕様を確認する
給与計算システムが変わるとこのような凡ミスが簡単に起こります。
注意しましょう。
事例4.賞与口座の変更忘れ
給与計算をやっていると給与口座の変更が突発的に起こります。
これもぼくが給与計算をはじめて間もないころです。
給与口座の変更届が提出されました。
そうすると「同時に賞与口座の変更をする」というのがルールになっていました。
でもその時、給与口座の変更はしましたが、賞与口座の変更を忘れていたのです。
結果、本人から「賞与が前の口座に振り込まれている」と連絡がありました。
本人は次回から変更してもらえば問題ないということでその場は収束しました。
原因としては
- 口座の変更があった時に賞与の口座を変更したかどうかのチェックをしていなかった
- チェック者も賞与の変更は当然行われているものだと思っていた
対策は下記のとおりです。
- 給与口座変更届が提出された場合は「賞与の変更もした」というエビデンスをつけて社内回覧する
- 賞与データ送信前に半年前から賞与月までの給与口座変更届を引張り出し、給与システムの振込口座一覧でチェックを行う
これ以来、ぼくは賞与の口座がちゃんと変更されているかチェックを欠かさなくなりました。
事例5.役付手当の金額変更漏れ
4月の給与計算の時です。
当時は昇級は4月だけど基本給の変更は6月で役付手当の変更は4月にするというなんともわかりずらいルールで運用していました。
給与計算をはじめて2年目の時です。
ぼくは、6月に基本給が変わるのだから役付手当も6月に変わると思い込んでしまっていました。
なので役付手当の変更はぜず、給与計算を終え、チェックの回覧を回しましたが、なんとそのまま決済が下りてしまいました。
給与データの送信も終わり、さてひと段落という時に上司が「あ!」と言いました。
「どうしたんですか?」と聞くと
「役付手当変更してないよね?」と言ったのです。
その時はまだ給料日は来ていませんでした。
なので、「組み戻し」を行うことになったのです。
銀行に電話して、書類をもらって必要事項を記入してFAXを送信。
訂正データを改めて送信し、何とか給料日に間に合いました。
原因としては
- 昇給と役付手当の変更月が同じだと思っていた
- チェックする側は4月でバタバタしていてザルのチェックをしていた
対策としては下記のとおりです。
- スケジュールに「役付手当変更月!」と明記しておく
- 過去の資料を確認してその月に何を変更したのか確認してから給与処理に入る
結果的にはその次の年から4月に基本給も変更することになり、間違うことはなくなりました。
給与計算ミスのリカバリーについて知りたい方へ
給与計算のミスのリカバリーをどのようにするか知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方にオススメの本があります。
こんなときどうする!?社会保険・給与計算 ミスしたときの対処法と防止策
この本には給与計算ミスのリカバリー策に加えて、改善策やお詫び状のサンプルなどわかりやすく書いてあります。
例えば
- 社会保険料の料率を変え忘れてしまった
- 退職者の精算を間違ってしまった
- 年末調整で扶養をはずし忘れた
など、よくありがちなミスの対策とリカバリー策が書かれています。
この一冊があるだけで、起こりやすいミスを防止できるし、もしミスしてしまった時の対処の仕方が分かります。
給与計算担当者の方は、ぜひご覧になってください。
まとめ
給与計算は絶対に間違ってはいけない業務です。
でも、間違ってしまうのが人間です。
給与計算を8年やっててもミスする時はミスをします。
でも、確実に毎年ミスは減っています。
なぜかというと、二度と同じミスをしないよう、いろいろな対策を積み重ねているからです。
給与計算は地味なわりに精神的にきつい仕事です。
でもあなたがいない限り給与は払われません。
非常に重要な仕事です。
この記事が給与計算担当者の参考になれば幸いです。